「ダーウィンの進化論」が私に教えてくれたこと。

最近は大学にて、いわゆる人工知能に関する研究をさせてもらっています。

そもそも人工知能の定義ってなんぞやって話にはなりますが、一口に人工知能といっても様々なアプローチの方法があります。最近ホットな分野は深層学習(Deep Learing)と呼ばれるもので、これは人間の脳内の神経細胞ニューロン)同士がやりとりされる仕組みをモデル化する手法です。

 

数あるアプローチ方法の中で私が取り組んでいる分野は、遺伝的アルゴリズムと呼ばれるもので、これは「ダーウィンの進化論」をもとにそれをモデル化した手法を用いて、ある状況における最適解を探索していきます。

いきなり人工知能ダーウィンの進化論という言葉が出てきて少々戸惑うかもしれませんが、やっていることは非常に単純明快です。

 

今回は例として、あなたの好きな洋服(シャツ)のデザインを、遺伝的アルゴリズムをもとに見つけていくこととします。以下の4つのプロセスを1サイクル(正確に言うと1世代)として、何サイクルも行っていきます。

1. 個体の提示

2. 評価・選択

3. 交叉

4. 突然変異

 

1. 個体の提示

個体とは、ダーウィンの進化論でいうところの遺伝子で、今回はシャツに相当します。

色、丈の長さ、襟の形について、最初はそれぞれランダムなシャツを10個体選び提示します。

 

2. 評価・選択

それぞれのシャツについて、1~5点の間であなたが評価をしていきます。そうするともちろん評価が高いシャツもあれば、評価の低いシャツも出てきますね。

その評価に合わせて、10個体のうち評価の高いシャツをいくらか複製する形で追加し、その追加分、一番評価の低いシャツから順に追いやっていきます。これはつまり、10個体のうち、あなたの好きなデザインのシャツが1のプロセスよりも割合として多い状態を意味します。

 

3. 交叉

次に、これら10個体それぞれの特徴を交換していきます。例えば、黄色の半袖Tシャツの個体と黒色の長袖シャツの個体が、黄色の長袖シャツと黒色の半袖Tシャツに変わるようなイメージです。

 

4. 突然変異

交叉を終えたそれぞれの個体のうち、ランダムに選ばれた個体の特徴をランダムに変化させます。これは、黄色の長袖シャツの個体を7部袖に変化させるイメージです。

突然変異を終えた10個体を、1のプロセスの際に提示します。

 

いかがでしたでしょうか。これを何サイクルも行っていくことで、あなたの嗜好に合ったデザインのシャツが見つかるのです!

 

 勘の良い皆さまはお気づきかと思いますが、遺伝的アルゴリズムにおいて大切なことは、”交叉”と”突然変異”です。

”交叉”をすることにより、自分の嗜好に合ったシャツを、より自分の嗜好性に近づけていくことを可能とします。

また”突然変異”では、自分でも気付かなかった思わぬ「好き」に対する発見を促します。

当初は特に好きでもなかったアーティストの曲を、友人からある種無理やり聴かされていくうちに、知らぬ間にその良さに気付き、気がつけばその友人と一緒にライブに行くまでになるという感じです。(この比喩伝わってますか?w)

 

遺伝的アルゴリズム(ひいてはダーウィンの進化論)って、私たちの日常生活にも応用できると私は考えています。

私個人としては、「自分には興味のない分野・領域についても知ってみること、そして自分とは異なる考え方にも耳を傾けてみること」の重要性を感じました。

図19にもあるように、今私たちが「一番」だと思っていることも所詮自分の知っている範囲内でしかないので、意図的にその範囲を広げてみると、自分でも気付かぬ思わぬ発見があるかもしれません。

 

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